外資系企業 リストラ後 3日目
21時間寝た。
突然の解雇劇によりショックで熱と頭痛が続いていた。
21時間の睡眠と暖かい関東ダシのうどんのお陰で頭痛が和らぐ。
人間 弱った時は睡眠と温かいメシに限るとつくずく思う。
自分が弱った時の対処法を知っているとイザ然るべき時が来た時は楽になる。
今日は少し動いて活動が出来そうだ。
昨日まではベットから出るのすら嫌だった。
まずは窓を開放してコーヒーを淹れる。
死体のように死ぬほど寝て、さんざん不貞腐れた後に飲むコーヒーは美味い。
本来ならば苦いはずのコーヒーだが、まろやかに甘く感じるくらいだ。
ショックで舌までおかしくなってしまったのか。
うん 美味い。
窓を開けると
カモメが「ピョーピョー」鳴きながら飛んでいる。
今まで全く気がつかなかった。
可愛いではないか。
カモメの鳴き声を文字に起こすのが案外難しい。
「ピーピー」でもないし
「ピェーピェー」でもない。
間をとって「ピョーピョー」だ。
去年の5月くらいから海外へ出国計画でずっとバタバタした生活を送っていた。
約1年近くジェットコースターのような毎日。
特に4ヶ月前からは息ができないくらいのプレッシャーがかかっていたし、
就労ビザ、出国までの手続き、不動産探し、役所手続きもあり仕事以外でもこなさなければいけないことが次々とあった。
去年から続く重いプレッシャーから開放された気分で少しホッとする。
自分で自ら課したチャレンジだったが本当にきつかった。
本当にきついのはこれからかもしれないが今は考えるのはやめておこう。
ぼーっとしているとLINEが届いた。
日本で一緒に仕事をしていた外国人の部下からだ。
「Hi, 私は今の会社を辞めるでしょう。 今の上司はフレンドリーではありません。 またあなたと仕事がしたい 寂しいです。」
要するに彼は
「今の職場は嫌だから俺を君の元へ引き抜いてくれない?」
ということなんだろう。
なんというタイミングか。
「すまない 実は私はノージョブだ」
とクスッと笑ってしまう。
素晴らしいタイミングすぎるので返信は見送ることにした。
続いて、
厄を落すかのように部屋の掃除を始めた。
意識はしてないが猛烈に部屋を綺麗にしたくなった。
先ずはシンクからだ。
生ゴミは捨てこべりついた汚れもゴシゴシ落す。
気分が良くなるくらい綺麗だ。
排水口もご覧の通り輝く。
飲食店でのアルバイト経験があるおかげか、ピカピカになるまで綺麗にする。
次は床。
ゴシゴシと温水で磨く。
玄関も温水で綺麗に掃除。
光を反射するくらい綺麗になった。
鞄や契約関係の書類も整理した。
鞄ひとつの生活でも不用品が知らぬ間に溜まっている。
何気なく取っておいた物も容赦なく捨てる。
ついでにネットフリックスや無意味なネットサービスを解約した。
そして久々にシャワーを浴びて髭を剃る。
解雇当日から全てが嫌になりずっとベットで寝ていたので髪もメチャクチャだった。
部屋も体も綺麗にして心もスッキリしたような気がする。
全てがスッキリしてきた。
いいぞ いいぞ
やる気も少しずつ湧いてきた。
「また何かしらチャレンジするぞ。」
そう思えてくる。